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​能の演目 な・は行

能 錦木(にしきぎ)

nishikigi

シテ 里男

ツレ 里女

ワキ 旅僧

諸国行脚の旅の僧が陸奥の狭布(けふ)里に辿り着き、夫婦らしい男女に出会います。男は錦木を持ち、女は鳥の羽で織った細布を持っているので、僧はその謂れを尋ねます。男女が代わる代わる答えるに、細布は幅が狭く身に合わない故「胸合い難き」など逢い難き恋の恨みを述べるたとえにし、また錦木は昔から此処の風習にて、恋する男が思いを寄せる女の家の門に美しく彩られた錦木を立てて、女に逢いたい男の錦木ならばこれを取り入れるが、思わぬ男からの錦木は何時までもそのままに捨て置くと語ります。そして僧を山蔭の錦塚の前に導き、二人とも塚のなかに消え失せます。物哀れに感じた僧が夜もすがら読経していると、塚の主なる男女の亡霊が現われます。男は夜毎三年も錦木を立て続けながら恋が実らなかった恨みを述べますが、僧の回向で今宵こそは望みがかなったと喜びの舞を舞い、明け渡る空と共に二人の姿は消え去ります。

能 鵺(ぬえ)

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前シテ 舟人

後シテ 鵺

ワキ  旅僧

間   芦屋の里人

諸国一見の僧が都への道すがら摂津国芦屋の里に立ち寄ります。日はすでに暮れて、光りものがでるという洲崎の御堂に泊まります。夜更け頃になると、小舟に乗った舟人が波間を漕ぎ分けやってきます。旅僧はそのただならぬ様子を不審に思い、名を問います。男は、自分は近衛院の御代に頼政に矢を射られて落命した鵜という怪物の亡霊だと明かし、回向を頼みます。光りものとはまさにこの猿の頭・蛇の尾・虎の手足を持つという鵺の亡霊なのでした。さらに怪物は射落とされたときの有様を詳しく物語りますが、やがて波間に消えて行ってしまいます。

能 野宮(ののみや)

nonomiya

前シテ 女

後シテ 六条御息所

ワキ  旅僧

間   嵯峨野の里人

諸国一見の僧があらかた都見物を終え、秋の末の一日、嵯峨野の野宮の旧跡を訪れます。そこへ一人の美しい女が現われ、ここは斎宮(いつきのみや)の精進の野の宮で、今も九月七日には宮を清め神事をするので、僧に立ち去るように言います。僧が謂れを問うと、昔世をさけて野宮に篭もっていた六条御息所のところへ、光源氏が訪れたのは今月今日であった事を教えます。そして御息所の寂しい生涯を語り、自らが御息所の幽霊であると明かして、黒木の鳥居の柱の陰に姿は見えなくなります。(中入)僧が夜もすがら御息所の菩提を弔っていると、御息所の亡霊が網代車に乗って現われます。加茂の葵祭りのおり、葵上と車争いをしたこと、源氏の寵愛を葵上に取られて失意に陥った事などを思い出し、すべてを諦めたように、無心に舞を舞います。そしてまた車に乗って、火宅の門を出て行きます。

能 野守(のもり)

nomori

前シテ 野守の翁

後シテ 鬼

ワキ  羽黒山の山伏

間   春日の里人

出羽の国(山形県)羽黒山からやってきた山伏が、大峰葛城山へ行く途中、大和国(奈良県)春日の里につきます。そこで野守の老人に行き合います。この老人は、昼は人となって野を守り、夜は塚にこもって住む鬼神なのです。山伏は傍らのいわくありげな水について尋ねます。その水は野守が姿を映す水鏡であり、本当の野守の鏡というのは、鬼神の持っている鏡のことだと答えます。山伏が本当の鏡を見たいというと、鬼の持つ鏡を見ると恐ろしくなるので、この水鏡を見なさいと言い捨て、塚の中に姿を消します。(中入)山伏が思いもよらぬ奇特にあったことを喜び、塚の前で祈っていると、鬼神が鏡を持って現われ、天地四方八方を映して見せたのち、大地を踏み破って奈落の底へ入ってゆきます。

能 羽衣(はごろも)

hagoromo

シテ   天人

ワキ   漁夫白竜

ワキヅレ 漁夫

三保の松原の朝ぼらけ、漁師の白竜(はくりょう)が浜辺に出てみると、近くの松に見慣れぬ衣がかかっているので、家の宝にしようと取って帰ろうとします。その時、何処からともなく美しい乙女が現われ、それは天の羽衣といって人間に与えるものではないので、返して欲しいと頼みます。白竜は返すかわりに天人の舞樂を所望します。やがて天人は羽衣を身につけ、この世ならぬ舞を舞い続けながら、霞にまぎれるように昇天してしまいます。

能 半蔀(はしとみ)

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前シテ 里女

後シテ 夕顔

ワキ  雲林院の僧

間   所の者

京都北山紫野の雲林院辺りで、立花供養をしている僧がいます。とりどりの草花の中に、ひときわ目立つ白い花があり、その花の陰より忽然と一人の美しい女性が現われます。女はその白い花は夕顔と教え、僧が名を問うと、今はこの世にない者、五条辺に住んだ夕顔であるといって立花の陰に隠れます。僧は五条辺りの何某の院と覚しき所へ回向に行きます。夕顔を弔っている僧の前に半蔀から現われたタ顔の亡霊は、光源氏との思い出を語りつつ夜すがら舞を舞っていますが、暁を告げる鶏の声や鐘の音が聞えると、名残惜しげに半蔀の中に入ってしまいます。僧の夢中に映ったのは源氏物語のタ顔の女であったのか、夕顔の花であったのか判然としません。

能 橋弁慶(はしべんけい)

hashibenkei

シテ 武蔵坊弁慶

子方 源牛若

ツレ 従者

間  都の者

比叡山西塔に住む武蔵坊弁慶は、ある願事があって五条の天神に丑の時詣をしています。今日は満願なので出かけようとすると、従者が昨日五条の橋に十二、三の少年が出て、通行人に小太刀で斬って廻ったと聞くので、外出は控えた方が良いと止めます。一旦は思い留まりますが聞き逃げしては物笑いになると変化退治を覚悟します。(中入)ここは夜更けの五条橋です。少年は実は牛若丸で今夜を最後に鞍馬山に上る身なので、腕試しのため屈強の者が通るのを待っています。やがて黒革の大鎧に大長刀を持った弁慶がさしかかります。弁慶は薄衣を被った牛若丸を女と思って通りすぎますが、後ろから長刀の柄本を蹴り上げられ、すわこそと切りかかります。弁慶がいかに斬り込んでも相手になりません。余りの強さに驚いて名を問えば、牛若丸と名乗ります。弁慶も名乗りをあげ、改めて主従の契りを結んで、九条の御所までお供するのでした。

能 班女(はんじょ)

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前シテ  花子

後シテ  班女

ワキ   吉田少将

ワキヅレ 従者

間    野上の宿の長

美濃国野上の遊女花子と吉田の少将は深い契りを交わし、形見として花の扇を交換し、少将は東に下ります。花子は恋焦がれ、他の客の席にも出ない有様なので、怒った宿の長に追い出されて都に向います。少将は都に帰る途中野上の宿に立ち寄りますが、花子の消息がわからず、失意の内に都に戻リ、下賀茂神社に参ります。そこに物狂となった花子が来合わせ、形見の扇に心境を託して、悲しみの舞を舞います。少将が狂女の扇を取り寄せて見れば、同じ形見の花の扇。二人は再会を喜び妹背の契りを固めます。

能 百万(ひゃくまん)

hyakuman

シテ 狂女百万

子方 百万の子

ワキ 男

間  所の者

京都嵯峨野の清涼寺(せいりょうじ)の境内です。ちょうど大念仏が行われているので、大勢の善男善女が集まっています。ここに、奈良西大寺辺りで拾った幼い子を連れた男がやってきます。門前の男の念仏に誘われて、子を失い物狂(遊芸人)となった母百万が出てきて、念仏の音頭をとり、法楽の舞を舞います。そして仏前に進んで、我が子にあわせて欲しいと祈ります。幼子は百万が自分の母であるというので、男は百万に引合わせます。百万は偶然母子が再会したのも、仏法の功力であると喜んで、我が子と故郷の奈良に帰って行くのでした。

能 富士太鼓(ふじだいこ)

fujidaiko

シテ 富士の妻

子方 富士の娘

ワキ 官人

間  下人

萩原の院(花園天皇)が管絃の催しに、並びない太鼓の上手として天王寺所属の浅間という楽人と住吉大社所属の富士という楽人が召されて技を競う事となりました。ところが浅間は富士に負けることを恐れ、ひそかに富士を殺してしまいます。(ここから能がはじまります)宮中では富士を哀れと思い、身寄りの者が来たら形見の品を渡して慰める手筈をしています。富士の妻は夫の帰りが遅いので心配のあまり都に上ります。果たして都に来てみれば、夫が非業の死を遂げたことでした。臣下から形見を渡された妻は、気をとり直して、形見の鳥兜狩衣をつけ、夫が別れたのも太鼓ゆえ、夫が討たれたのも太鼓ゆえと思い、怨念を凝らして太鼓を打ちます。激しい狂乱状態も治まり、今は心の迷いも晴れて、太鼓こそ夫の形見と思いあきらめ、再び相伴って故郷に帰って行くのでした。

能 藤戸(ふじと)

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前シテ  漁師の母

後シテ  漁師の霊

ワキ   佐々木三郎盛綱

ワキヅレ 従者

間    盛綱の下人

源平の合戦のおり、備前国(岡山県)藤戸の合戦で先陣の功のあった佐々木盛綱は、恩賞により備前の児島を賜り、めでたく任地に入部します。そして先ず領民の訴訟を聞いて善政を敷くのが第一と考え、触れを出します。そこへ一人の老婆が現われ、罪もない我が子が盛綱に殺されたと恨みを述べます。盛綱は、一度は否定しますが隠し切れずに告白します。藤戸の合戦に手柄を立てようと漁師に浅瀬を聞き出しますが、他人に教えられては困るので、その漁師を殺して海に沈めてしまったのです。老婆は悲しみを新たにし、自分も殺してくれと泣き叫びます。盛綱は前非を悔いて、管絃講で漁師の霊を弔うことにして、老婆の僅かに慰め自宅まで送らせます。(中入)盛綱が漁師を弔っていると、海中から漁師の亡霊が現われます。浅瀬を教えたばかりに殺されたその辛さ、口惜しさを訴え、悪霊となって思いを晴らそうとしたが、いま供養を受けて成仏すると語り終え、再び水底に沈んでいきます。

能 二人静(ふたりしずか)観世流

futarishizuka

前シテ 里の女

後シテ 静御前の霊

ツレ  菜摘み女

ワキ  勝手神社の神職

間   下人

 

ここは大和の国吉野菜摘川。正月七日の神事に供える若菜を菜摘女が摘んでいると一人の女が現われ、吉野に帰ったら神職に一日写経して自分を供養してくれるよう伝言して欲しいといいます。菜摘女が名を問うと、女はそれには答えず、もし疑う人があれば、その時自分があなたに憑いて名を明かすと言い残して消え失せます。菜摘女は立ち帰り神職にその旨を伝えますが、ふと疑いの言葉を漏らしてしまいます。するとたちまち気色が変わり神職が霊に名を問うと静御前であるとほのめかします。静の霊であると知った神職は舞を所望し、跡を弔うことを約束します。取り憑かれた菜摘女は昔の舞衣装をつけて舞いはじめると、静の亡霊も同じ衣装で現われ、二人で相舞し、後の回向を頼んで、静の霊は去って行きます。

能 船弁慶(ふなべんけい)

funabenkei

前シテ  静御前

後シテ  平知盛

子方   源義経

ワキ   武蔵坊弁慶

ワキヅレ 従者

間    船頭

源義経は兄頼朝と不和になり、西国に落ちのびようと大物浦(だいもつのうら)に着きます。義経を慕って静御前がここまで同行してきますが、弁慶の助言で義経は静に帰京を命じ、静は別れの舞を舞います。義経一行が船出すると、海上に平家一門の亡霊が現われ、平知盛の霊が長刀を持って襲い掛かりますが、弁慶の祈祷により知盛の霊は消え失せ、西国へ船旅が続きます。

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