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​能の演目 ま・や・ら行

能 巻絹(まきぎぬ)

makiginu

シテ 巫女

ツレ 男

ワキ 勅使

間  従者

早春の熊野路です。時の帝は御霊夢によって三熊野に千疋の巻絹(反物)を納めよと令を発し、勅使が派遣されて各地から続々と巻絹が集められます。都からも捧げ物を届けるべき使が熊野路をのぼってゆきますが、途中音無の天神に参詣し、咲きにおう梅の花を嘆賞して一首の和歌を献じます。ところがそれがために日限に遅れてしまい、彼はあらけなく縛り上げられ断罪を待つばかり。そこへ一人の巫女が現われて音無の天神に仕える者と名乗り、かの者は昨日天神に和歌を献じたために遅参した者であると弁じ、その証拠にかの使者に「音無にかつ咲きそむる梅の花」と上の句を詠ませ、自ら即座に「匂はざりせば誰か知るべき」と下の句をつけて献歌のことは偽りではないと証明して罪を晴らし、縛めを解き祝詞をあげ神楽を奏するうちに天神が憑りうつって狂気の姿となりますが、やがて神は去り巫女は茫然と本性に立ちかえります。

能 枕慈童(まくらじどう)

makura jidou

シテ   慈童

ワキ   勅使

ワキツレ 従臣

魏の時代の中国。酈県山(てっけんさん)に薬の水が湧き出たという噂を聞き、文帝(ぶんてい)はその水上を見てくるよう宣旨を下します。臣下が山に分け入ってふと見ると草庵があり、その中から少年が現われます。不審に思い、臣下が名を問うと周の穆王(ぼくおう)に仕えていた慈童のなれの果てであると答えます。周とは魏より数代も前の時代、その上少年というのは更に不思議な事です。仔細を問うと、帝よりいただいた枕に書かれた二句の妙文により不老不死の薬を得て、七百歳の長寿を保っていると教えます。又この薬の水を汲めば、誰でも千年の齢を得られるであろうと、興にのって面白く舞を舞って見せます。

能 松風(まつかぜ)

matukaze

シテ 松風

ツレ 村雨

ワキ 旅僧

間  須磨の浦人

諸国行脚の旅僧が、津の国須磨の浦に着きます。浜辺に由ありげな松があるので里人に問うと、松風村雨姉妹の旧跡と答えます。菩提を弔っていると日が落ち、そこに汐汲車を引いて二人の海人乙女が戻ります。僧が松の旧跡を弔った事を話し、在原行平の古歌をひくと、二人はさめざめと泣き出します。そして自分たちは松風村雨の幽霊であると明かし、その昔中納言と契りを結んだ思い出を語ります。そのうち松風は心を乱し、形見の烏帽子狩衣を身に付け、舞を舞います。しかしそれは僧の見た夢であったか。

能 満仲(まんじゅう)

manjyu

シテ 藤原 仲光

ツレ 多田 満仲(ただまんじゅう)

子方 美女丸(満仲の息子)

子方 幸寿丸(仲光の息子)

ワキ 恵心上人(えしんしょうにん)

多田満仲は自分の息子美女丸と部下の藤原仲光の息子幸寿丸を並べ、美女丸に学問の成果を試すが、思わしくなく、仲光に美女丸を討つように命じます。主君の息子を誅することはできずにいると、父の心を推し量り、幸寿丸が身代わりを申し出て、満仲には美女丸を討ったと報告します。そこに比叡山の恵心上人が訪れ、仔細を語ります。美女丸は許され、祝の席で仲光は舞を舞いますが、我が子を失った悲しさは、消し去ることはできません。

能 三井寺(みいでら)

miidera

前シテ  千満の母

後シテ  狂女

子方   千満

ワキ   園城寺住僧

ワキヅレ 従僧

間    清水寺門前の者

間    三井寺の能力

我が子千満丸(せんみつまる)の母は清水寺に参籠し、いなくなった我が子に再び会えるように祈願していると、夢のお告げがあります。門前の者がその霊夢に従い、三井寺に行くよう勧めます。(中入)ここは三井寺の境内、今宵は八月十五夜とあって、寺の住僧や契約を交わした稚児達が講堂の庭で月見をしています。一方千満の母は、物狂となってやっと三井寺にたどり着き、月見をしている場所に入り込みます。そして狂女は興にのって、鐘楼に登って鐘をつこうとします。住僧に止められますが鐘の故事を述べ、鐘をつきます。稚児が狂女の故郷を尋ねてもらい、はじめて別れた母とわかります。互いに名乗りあい、嬉しさのあまり狂気も直り、母子は共に故郷に帰っていきます。

能 三山(みつやま)

mituyama

前シテ 里女

後シテ 桂子の霊

後ツレ 桜子の霊

ワキ  良忍上人(りょうにんしょうにん)

良忍上人が三山で若い里女に出会います。香具山に住む膳手公成(かしわでのきんなり)と桂子、桜子との恋模様を女は語り、桂子と名乗って池の底に沈みます。念仏を唱えていると、桜子の霊が現われ、桂子の恨み解くように懇願しますが、桂子の霊が現われ後妻打(うわなりうち)の争いとなりますが、上人の念仏により二人は成仏します。

能 三輪(みわ)

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前シテ 里女

後シテ 三輪の神

ワキ  僧玄賓

玄賓(げんぴん)のもとに、毎日樒(しきみ)と閼伽(あか)の水を持ってくる女がいます。玄賓は素性を尋ねると、秋の夜寒をしのぐ衣を賜りたいと願い、玄賓が快く与えると、杉が立っている門を目印に来て下さいと言い残して姿を消します。玄賓が女の言葉を頼りに三輪明神の近くまで来ると、二本の杉に先ほど与えた衣が掛っており、その裾に一首の歌が書いてあります。読んでいると杉の木陰から御声がして三輪明神が現われます。そして和歌の徳を讃え、神楽を奏しますが夜明けと共に消え失せます。

能 望月(もちづき)

mochizuki

シテ 小沢友房

子方 庄司の子花若

ツレ 安田庄司の妻

ワキ 望月秋長

間  望月の下人

信濃の国の住人安田庄司友春(やすだのしょうじともはる)は、従兄の望月秋長と口争いの末殺害されました。友春の家臣小沢刑部友房は自分も狙われているということを耳にしたので、一時難を避けるため守山の宿に足を留め、ここに甲屋という旅宿を設けて暮らしています。そこに夫が討たれた後、便りとする術がないので一子花若と流浪の旅を続ける友春の妻が来かかり宿をとったところ、宿の亭主が昔の家来の小沢刑部友房であることを知り、再会を喜びます。そこへ偶然、主人友春の敵である望月秋長が宿泊します。そこで友房は今宵こそは仇を討たねばならぬと心に定め、なにくわぬ顔で望月を歓待し、花若の母を盲御前に仕立てて花若とともに座敷に出し、曲舞(くせまい)を謡わせたり、花若に八撥を打たせたりした末、自分も獅子舞を舞います。そして望月が居眠ったすきを見ておどりかかり、花若と二人で敵討ちを成し遂げます。

●敵討ちの手段として芸尽くしを見せる能で、(クセ)(鞨鼓)(獅子)と三人三様の芸を演ずるのが趣向。特に獅子舞のあることで重い習い物とされています。

能 求塚(もとめづか)

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前シテ 里女

後シテ 女の霊

ツレ  里女

ツレ  里女

ワキ  旅僧

間   里の男

ここは摂津の国、生田の里です。若い乙女達が若菜を摘んでいます。通りかかった僧が、近辺の名所を問うと色々教えますが、求塚のことを聞くと知らぬと答えそのうち皆家路についてしまいます。ところが一人だけ残った乙女が僧を求塚に案内し、塚にまつわる悲恋物語を語り、自分が菟名日乙女(うないおとめ)の亡霊で、日夜地獄の責め苦に悩んでいると言って姿を消します。僧が傍らで読経していると、乙女の亡霊が憔悴した姿を現わし、すさまじい地獄の有様を見せますが、また暗穴道に姿を消します。

能 紅葉狩(もみじがり)

momijigari

前シテ  女

後シテ  鬼女

ツレ   女

ワキ   平維茂(たいたのこれもち)

ワキヅレ 従者

間    末社の神

秋の戸隠山。何処から来たのか美女達が幕を張って紅葉狩に興じています。鹿狩に来た平維茂(これもち)一行はこの宴に通り合わせ、馬から下りて行き過ぎようとすると、美女は酒宴に誘います。美女の酌を受けるうち、維茂は睡魔に襲われます。美女は夢を覚ますなと怪しい言葉を残して消え失せます。維茂の夢中に石清水(いわしみず)八幡の神託があり、今の女達がこの山の鬼女であることを知り、剣を抜いて待ち受けます。やがて現われたのは、身の丈一丈あまりの鬼神。正視できぬ恐ろしさですが、維茂は剣を振るって戦い、ついに退治してしまいます。

八島(やしま)

yashima

前シテ 老翁
後シテ 源義経
ツレ 男
ワキ 旅僧


都の僧が西国行脚の途中四国の八島の浦へやって来ます。日暮れ頃、釣竿を肩にした老翁と若い漁夫が通りかかったので、一夜の宿を乞うと老翁は家が粗末なのでと断りますが、都の者と知ると懐かしがり、中へ入れます。老翁は旅僧の求めに応じて八島での源平合戦の模様を物語ります。
その話があまりに詳しいので僧が老人の素姓を問うと、義経の化身である事をほのめかして消え失せます。やがて夜となり、僧の夢中に鎧姿の義経の亡霊が現われます。
生死の海に漂う義経の魂は今また修羅道の合戦の有様をつぶさに再現しますが、夜明けと共にその姿は消え失せ、八島の浜辺は晴れわたり波がたゆたうばかりです。

能 遊行柳(ゆぎょうやなぎ)

yugyouyanagi

前シテ 老人

後シテ 柳の精

ワキ  遊行上人

間   白河辺の者

遊行上人が広い道に行こうとすると、老人が古道へと導き、古塚の朽木の柳の謂れを語ったのち、塚に姿を隠します。上人の念仏の力により、柳の精が老翁の姿で現れ、報謝の舞を舞って消え失せます。

能 熊野(ゆや)

yuya

シテ   熊野

ツレ   朝顔

ワキ   平宗盛

ワキヅレ 従者

ここは京の都。平宗盛に召されている遊女熊野は、遠江国(とおとおみのくに)池田宿に残してある老母が病と聞いて度々お暇を乞いますが、宗盛は花見の相手を申し付けるつもりで許しません。おりしも池田宿から侍女の朝顔が、母の手紙を熊野に届けに来ます。熊野は手紙を読み重ねて暇乞いをしますが、宗盛は聞き入れず花見をすすめ、共に牛車の人となります。清水寺に着き、桜の木の下で酒宴を開き、宗盛は熊野に慰みの舞を所望します。熊野は悲しみの心を押し隠して舞を舞いますが、俄かに村雨が来て花を散らすのを見て、母の身が思いやられ、一首の歌を宗盛に差し出します。宗盛も哀れに思い、暇を取らせます。熊野は病母の待つ池田をさして、東路を急ぎます。

能 楊貴妃(ようきひ)

youkihi

シテ 楊貴妃の霊

ワキ 方士(ほうじ)

間  常世国の者

安禄山の乱の時殺された楊貴妃のことが忘れられない唐の玄宗皇帝は、神仙の術を会得した方士に命じて、楊貴妃の魂魄のありかを尋ねさせます。方士は天上から黄泉まで探しますが見当たらず、最後に常世(とこよ)の国の蓬莱宮(ほうらいきゅう)へとやってきます。太真殿という御殿のうちを窺っていると、中から昔を偲ぶ詠嘆の声が聞こえてきます。方士が勅使と名乗ると、簾を押し上げ姿を見せます。方士が使いの趣を述べると、皇帝との昔を懐かしみ憂いに沈みます。方士は楊貴妃と会った証に形見の品を所望すると、玉簪を差し出します。方士は簪のようなものではなく、皇帝と交わされたお言葉があればと聞かせて欲しいと望むと、七夕の夜に永遠の愛を誓ったことを打ち明けます。そして出来れば未来でお会いしたいと伝えて欲しいといいます。更に舞いを舞ってみせ、形見の品を持って帰る方士を一人寂しく見送ります。

能 夜討曽我(ようちそが)

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シテ  曽我五郎時致

前ツレ 曽我十郎祐成

前ツレ 鬼王

前ツレ 団三郎

前ツレ 鬼王

後ツレ 御所五郎丸

後ツレ 古屋五郎

後ツレ 立衆

間   大藤内

間   狩場の男

曽我十郎、五郎兄弟、鬼王、団三郎兄弟の主従四人は、富士の裾野の巻狩に参加し、機を窺って父の敵の工藤祐経(すけつね)を討とうと相談します。しかし、このことを母に告げていないので、鬼王・団三郎に形見を持たせて故郷に帰そうとします。二人は主君と最期を共にしたいと言い張りますが、母への使者は二人しかいないと説得され、泣く泣く故郷に帰っていきます。(中入)兄弟は首尾よく敵を討ち果たしますが、狼藉者とみて捕らえようとする軍勢のため散り散りになります。既に兄十郎は討たれたとみえ、五郎の呼ぶ声にも応答がありません。五郎は一人で奮戦して一歩も引きませんが、薄衣を被った御所五郎丸を女と思い、油断をしたところを大勢に取り囲まれ、遂に縄打たれてしまいます。

能 養老(ようろう)

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前シテ 老翁

後シテ 山神

ツレ 男

ワキ 勅使

美濃国本巣の郡(もとすのこおり)に霊泉が湧き出たとの奏聞を受けた雄略天皇は、勅使を実検に赴かせます。一行が養老の滝のほとりに着くと、ちょうど樵夫の父子が通りかかったので、勅使は養老の滝の名のいわれを尋ねます。父子は宣旨に感激して、親孝行の徳が報いられてこの滝の霊泉が授けられたこと、これを飲むと心も勇み老の養いとなったので養老と名付けたことを述べ、勅使をその滝壷に案内します。すべてを見聞した勅使はその奇特に心を打たれ、急ぎ帰って奏聞しようと喜び勇んでいると、不思議にも天から光が輝き花が降り音楽が聞こえます。土地の者がやって来て滝の水を飲んで若返りの様を見せた後、やがて養老の山神が出現します。そして泰平の世を讃え、君の八千代の栄えを祝って谷川や嵐の音に合わせて舞を奏し、天上へと帰って行きます。

能 吉野静(よしのしずか)

yoshino shizuka

シテ 静御前

ワキ 佐藤忠信

頼朝と不仲になった義経が、吉野山から落ち延びる事になった。衆徒を欺くために佐藤忠信と相談した静御前は、兄弟の和解などを語り、義経の忠心や武勇を語り舞を舞い、衆徒が見とれている間に時間を稼ぎ、無事に義経を落ちのびさせる。

能 頼政(よりまさ)

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前シテ 老翁

後シテ 源三位頼政

ワキ  旅僧

諸国行脚の僧が奈良路へ向うその道すがら、宇治の里を通りかかり美しい景色に見入っていると、一人の老人が忽然と現われ言葉をかけます。老人は僧に言葉をかけ、所の名所を教え平等院に案内します。そして扇形に残った芝を見て僧が質問をすると、源三位(げんざんみ)頼政が自害した跡であり今日が命日にあたること、自分はその頼政の幽霊であると名乗って姿を消します。(中入)僧が頼政の菩提を弔っていると、頼政の幽霊が在りし日の甲冑姿で現われ、僧に読経を頼み敗戦の様子を物語ります。長物語を終えた頼政の幽霊は再び僧に回向を頼み、扇の芝に帰ってゆくのでした。

弱法師(よろぼうし)

yoroboushi

シテ 俊徳丸
ワキ 高安通俊


高安の里に住む左衛門尉通俊はある者の讒言を信じ、一子俊徳丸を追放しますが、今では悔やんでいます。そこで十七日の施行を天王寺で営み、今日は丁度満願の日です。父に捨てられた俊徳丸は盲目となり、人々に弱法師とさげすまれていますが、杖をたよりに天王寺にたどり着きます。
通俊はかの弱法師が我が子俊徳丸であることを知り、名乗りかけますが、弱法師は恥ずかしさのあまり逃げようとします。通俊は追いつきその手をとり、高安の里に連れて帰って行きます。

能 来殿(らいでん)

raiden

シテ  菅原道真の霊

後シテ 道真の怨霊

ワキ  法相坊僧正

比叡山延暦寺の座主(ざす)法性坊僧正が仁王会(にんのうえ)を執り行う夜すがら、菅相丞(かんしょうじょう 菅原道真)の亡霊が現われます。相丞は没後、座主から追弔を受けた事を感謝します。そして自分が無実の罪によって果てたことは、藤原時平(しへい)の讒訴(ざんそ)のためで、今も恨めしいというと、忽ち気色が変り本尊に手向けてあった石榴を掴み、これを噛み砕いて妻戸に吹きかけると、火焔となって燃え上がります。しかし僧正は騒がず、酒水の印(水を注いで火を消す意味の行法)を結び、大日如来に帰依する真言を唱えると、火は消え相丞の霊も消え失せます。やがて辺りに妙なる音楽が鳴り響き、菅相丞の霊が天満天神の姿となって現われます。延長元年に大富天神の神号を賜ったが、君の恵みもあまねく行き渡り、政事の正しく行われる御代が誠にありがたいと舞を舞って神霊は北野へ移ります。

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