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​能の演目 か行

能 杜若(かきつばた)

kakitubata

シテ 里女

ワキ 旅僧

諸国一見の僧が都から東国へと志す途中、三河国(愛知県)へやってきます。とある沢辺に杜若の花が美しく咲いているのに見とれていると、そこへ一人の里女が現われ、ここは八橋という古歌にも詠まれた名所であり、昔、在原業平が東下りの際ここに休み、「かきつばた」の五文字を名句の頭において「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬるたびをしぞおもふ」という歌を詠んだという故事を教えてくれます。その上旅僧を自分の庵に案内し、泊まってゆくようにすすめます。やがて、女は初冠に唐衣を着てその姿を見せに来るので、僧は驚いて素性を尋ねます。女は自分が杜若の精であると明かし、また業平は歌舞の菩薩の化現であるのでその詠歌の功徳により非情の草木も成仏したと告げ、さらに「伊勢物語」や業平について語り、舞を舞い、やがて消え失せます。

能 景清(かげきよ)

kagekiyo

シテ 景清

ツレ 人丸

ツレ 従者

ワキ 里人

平家の勇将悪七兵衛(あくしちびょうえ)景清は、尾張(愛知県)の熱田の一遊女との間に一女人丸をもうけていましたが、女の野で、鎌倉亀ヶ谷の長に預けていました。源平の戦乱後に日向国(宮崎県)に下り、盲目の琵琶法師となって乞食の生活を送っているという噂を聞いた人丸は、一人の供を連れて尋ねてきますが、落ちぶれた今の身を恥じてわざと他人のように応対します。再び訪れた人丸に、景清はかたくなな心を和らげ、懐かしの我が子としみじみ言葉を交わします。そして娘の頼みに応じて、八島の合戦の模様を語り、昔日の勇将の面影を彷彿とさせ、人丸を慰めます。そして二人は涙ながらに別れを告げ、景清は我が子の後ろ姿をじっと見送り、一人寂しく藁屋にとどまります。

能 花月(かげつ)

kagetu

シテ 花月

ワキ 旅僧

間  清水寺門前の者

七つになる我が子を天狗に取られた父親が出家となり、故郷の筑紫(九州)を出てその行方を捜しながら諸国を行脚して数年、京都の清水寺に着きます。ここにこの辺りを徘徊して小歌などを歌う花月という遊芸者が現われます。花月は参詣人の所望に応じ、色々な芸を披露します。僧は群集に交じって花月の遊芸に興じていますが、よくよく見れば行方不明になった我が子に似ている事に気づきます。花月の生い立ちを尋ねると、七つの時天狗にさらわれた身の上を語るので、まさしく我が子とわかり、互いに名乗りあい親子の対面を喜びます。花月は鞨鼓を打って、自分が天狗にさらわれて全国の山々を巡った有様を、謡いに合わせて再現してみせます。父と会えた花月は、ともに仏道修行の旅に出ます。

kashiwazaki

シテ   花若の母

子方   花若

ワキ   柏崎某の家来(小太郎)

ワキヅレ 善光寺の従僧

越後の国(新潟県)柏崎で、訴訟のため鎌倉に上っていた夫の留守を守る妻のもとに、夫に随行していた家人小太郎が帰ってきます。喜んで迎えた夫人は、小太郎から夫が急逝したこと、そしてその死を悲しんだ一子花若がいずれともなく、遁世してしまったことを知らされます。夫の形見と花若の文を受け取った母は、物狂となり、何処ともなく迷いでます。(中入)花若は、信濃(長野県)の善光寺の住職に養われていました。ある日一人の狂女が、御堂に入ろうとするのを咎めます。狂女は極楽世界へ参ろうと仏説を述べ、夫の形見の烏帽子・直垂を取りだし、在りし日を偲んで舞を舞い、我が子の行方を案じていると、念仏を唱えます。僧の引き合わせで、この狂女こそ花若の母であるとわかり、親子がやっとめぐり合います。  

能 葛城(かづらき)

kaduraki

前シテ 里女

後シテ 葛城の神

ワキ  羽黒山の山伏

出羽の国羽黒山の山伏が、大峰葛城の明神へ参詣を志し、日を重ねて遂に辿り着きましたが、おりしも降りしきる雪の中、前後もわからぬほどなので木蔭に休んでいました。そこへ通りかかった里女が寒さを凌ぐために谷底の我が家へと案内します。勧められるままに寛ぐ山伏に、あまりにも夜寒だからと言って女は葛城山の標(しもと・細枝)を焚いてもてなします。山伏に問われると女は標のいわれを語り、又ゆかしい歌問答をかわします。やがて山伏が後夜の勤めを始めようとすると、女はその昔、役の行者の言いつけを果せなかったために三熱の苦を受けているこの身を救ってほしいと打ち明けて姿を消します。夜もすがら勤行をする山伏の前に葛城明神が現われて、祈祷を喜び舞を舞いますが、自分の醜貌を恥じてか夜も明けぬうちに葛城の岩戸に帰って行きます。

能 鉄輪(かなわ)

kanawa

シテ   女

ワキ   安倍晴明

ワキヅレ 男

間    貴船宮の社人

都に住む女が、自分を捨て新妻を迎えた夫の不実を恨み、貴船明神に日参し願をかけています。今日も社前に進むと、待ち構えていた社人が「頭に鉄輪を頂き、その三本の足に火を灯し、顔に丹を塗り、赤い着物を着て怒る心を持てば鬼になり、恨みを果たせる」と神託があったと告げます。女は、それは人違いだと言いますが急に顔色が変わり、薄情な夫に思い知らせてやろうと走り去ります。一方、下京の男は悪い夢見が続くので陰陽師晴明に占ってもらいます。すると、女の恨みで今夜にも命が尽きるといわれ、急いで祈祷を願います。晴明が夫と新妻の人形を作り祈り始めると、間もなく凄まじい空模様の中、悪鬼となった女の霊が現われます。そして夫の心変わりを責め新妻の髪を掴み激しく打ち据えなどしますが、守護の神々に追われ、神通力を失い、心を残しながらも退散します。

能 加茂(かも)

kamo

前シテ 里女

後シテ 別雷神(わけいかづちのかみ)

ツレ  天女

ツレ  里女

ワキ  室明神の神職

間   賀茂の末社の神

播州室(むろ)の明神に仕える神職が京に上り、賀茂神社に詣でます。ふと見ると川辺に祭壇が築かれ白羽の矢が立っています。水桶を持った里女が通りかかるのでその謂れを問います。里女は上賀茂神社の縁起を語り、自分は貴い神の化身であるといって姿を隠します。暫くすると御祖(みおや)の神が天女の姿で現われ御代の栄えを祝ってあらたかな舞を舞い、続いて別雷神(わけいかづちのかみ)も姿を現わし、五穀が成就するように国土を守るのだと神徳を示し、御祖の神は糺(ただす)の森へ、別雷神は虚空高く立ち去ります。

能 通小町(かよいこまち)

kayoikomachi

シテ 深草少将

ツレ 小野小町

ワキ 山居の僧

洛北八瀬の里で、夏の仏道修行をしている僧があります。その庵に毎日一人の女が、木の実や柴を持って現われます。不思議に思い素性を尋ねると、小野・・・といいさしたまま、あとは言葉をにごしてかき消すように去ってしまいます。僧は女の言葉から小野小町の幽霊ではないかと察し、市原野に行き小町の亡き跡を弔っています。すると小町の亡霊が現われ、仏戒を授かりたいと僧に乞います。続いて深草少将が現われ、小町の成仏を妨げます。僧は百夜通(ももよがよ)いの有様を見せよと少将に説きます。少将は請われるまま、小町を慕って99夜通い、あと一日で恋の成就する喜びの絶頂で死した昔語りを狂おしく見せ、やがて小町ともども成仏します。

能 祇王(ぎおう)

giou

シテ 仏御前

ツレ 祇王御前

ワキ 瀬尾太郎

平清盛は白拍子の祇王を寵愛し、日夜酒宴に召されています。また加賀の国から、清盛に御目にかかろうと若い仏御前が推参しますが、清盛の対面が叶いません。仏御前の心中を思いやって祇王は清盛にとりなし、やっと許しが出ます。かくて舞の衣装を着た祇王・仏御前の二人は、清盛の仰せに随い相舞を舞います。いつしか清盛の心は仏御前に移り、一人で舞えと命じます。清盛の寵愛が仏御前に移った事を知った祇王は暇乞いをしますが、仏御前に引き留められ、二人の友情に変わりがない事を誓います。

能 砧(きぬた)

kinuta

前シテ 芦屋某の妻

後シテ 妻の霊

ツレ  侍女夕霧

ワキ  芦屋某

間   下人

九州芦屋の某は、訴訟の事で上京して既に三年の年月がたっています。故郷の事が気にかかるので、今年の暮れには帰るという文を侍女の夕霧に持たせて、妻のもとに使いに出します。寂しく月日を送っている妻はこの便りを聞き、僅かに心が慰められますが、おりから松風に誘われて聞こえてくる砧の音に誘われて、自分も夕霧と共に砧を打ち、心を慰めます。そこへ都から、今年も帰れぬという知らせが入ります。妻はもしや夫が心変わりして、自分を捨てたのではないかと疑い、心乱れて狂い死にしてしまいます。(中入)やっと訴訟が解決した某が故郷に帰ってみると、待っていたのは妻の墓標ばかりです。妻の菩提を弔っていると、妻の亡霊が三途の川から浮かび上がり、生前の妄執で地獄の苦しみをうけている様を語り、夫の不実を恨みますが、法華経の功徳で成仏して中有の闇に消え失せます。

能 清経(きよつね)

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シテ 左中将清経

ツレ 清経の妻

ワキ 淡津三郎

左中将平清経に仕える淡津三郎は、自害した主人の遺髪を持ち、清経の妻の家にたどり着きます。遺髪と共に清経の最後の様子を報告しますが、妻は一人で先に自殺したことを嘆き、せめて夢なりとも姿を見せてほしいと、打ち沈んでいます。いつかまどろんだかと思うと、妻の枕もとに、亡き夫の清経が立っているのに驚きます。折角二人が相逢いながら、清経は形見を受け取らぬ妻を、妻は先に死んだ夫のことを、互いに別々の思いに悲しみますがやがて恨みも晴れ、清経は昔の合戦の話をして聞かせます。更に清経は修羅道の恐ろしい有様を再現して見せますが、成仏すると語って無限の闇の中に消え失せます。

能 金札(きんさつ)

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前シテ 老翁

後シテ 天心太玉神(あまつふとだま)

平安京を完成した桓武天皇が、伏見にも神社を造ろうと勅使を送ります。伏見に着いた勅使は、参詣している老翁に目を止めます。翁は伊勢の国(三重県)阿漕が浦の者だと告げ、造営にちなんで木尽しの歌を謡います。すると不思議なことに、天から金札が降ってきます。勅使が金札を取り上げて読み上げると、伏見に住むと誓う言葉があります。翁は、伏見とは日本の総名であると教え、その謂れを語りかき消すように姿が消えますが、天に声が残り、我は伊勢大神宮の使いの天津太玉神(あまつふとだま)であると告げます。(中入)楽の音に誘われて天津太玉神が現われ、弓矢で武徳を表し日本国を寿ぎ神威を示し、君を守り国を治める印の金札を宮に納めて、再び姿を消します。

能 熊坂(くまさか)

kumasaka

前シテ 僧

後シテ 熊坂長範

ワキ  旅僧

間   所の者

旅の僧が美濃国赤坂で土地の僧に声を掛けられます。男は盗賊の棟梁、熊坂長範(くまさかちょうはん)の亡霊であると明かして、姿を消します。やがて、薙刀(なぎなた)をかついで長範の亡霊が現われ、生前牛若丸に討ち取られた時の有様を語り、再現します。

能 鞍馬天狗(くらまてんぐ)

kuramatengu

前シテ  山伏

後シテ  天狗

子方   牛若

前子方  稚児

ワキ   車僧

ワキヅレ 同伴の僧

間    溝越天狗

間    西谷の能力

鞍馬山は今花の盛りなので、西谷の僧から東谷の僧に花見の誘いの文がきます。東谷の僧は花見児達を連れ桜樹の下で興じていると、怪しげな山伏が割って入り折角の花見の団欒を乱してしまいます。僧は、花見は明日にしようと稚児達を連れて立ち去りますが、一人残っている子がいます。これは源義朝の子で沙那王といい、山寺で修行中なのです。山伏は、自分はこの鞍馬山に住む大天狗で、沙那王に兵法を授け平家を討たせるつもりであると明かし、雲を踏んで飛び去ります。沙那王は翌晩武装して天狗の出現を待ちます。やがて大天狗が現われ兵法の秘伝を残らず教え、源氏の再興を予言し、終生影のように側を離れず、弓矢のカ添えを誓って梢の奥に消えます。

能 呉服(くれは)

kureha

シテ 呉織(くれはとり)

ツレ 漢織(あやはとり)

ワキ 臣下

間  所の者

時の天皇に仕える臣下が呉服の里にやってくると二人の女が機を織っており、応神天皇の治世を寿ぎ、消え失せます。夜明け近くに呉織が立派な姿で現われ、舞を舞い今の天皇に綾を捧げ治世を寿ぎます。

能 黒塚(くろづか)

kuroduka

前シテ  賤女

後シテ  鬼女

ワキ   阿闍梨祐慶

ワキヅレ 同行山伏

間    随行の能力

那智の東光坊の阿闍梨祐慶(あじゃりゆうけい)は諸願成就のため全国を行脚していますが、本山の熊野を出て日を重ね、ここ陸奥国(青森県)安達ケ原へたどり着きます。日も暮れて人家もないので思案していると、幸い火の光が見えるので一夜の宿を頼みます。女主人は、見苦しいからと最初は宿を断りますが、この夜寒の事と憐れんで扉を開けて招き入れます。女は請われるまま、枠桛(わくかせ)輪という糸をつむぐ道具で糸を繰り、人の一生も糸のように細くも長い命の辛さを思って涙を流します。やがて夜寒を凌ぐために裏山に薪を取りに行きますが、その留守に部屋をのぞくなと堅く約束をさせます。(中入)のぞくなという禁を破った祐慶の従者がその部屋をのぞくと、夥しい人の死骸が積み重なっています。さては鬼の住家であったかと、祐慶達は肝をつぶして逃げ去ります。先ほどの女は、約束を破られた恨みに鬼女の本性を現わし、一口に食い殺そうと追ってきますが、祐慶の調伏に屈し次第に魔力も弱り、最後は夜風にまぎれて消え失せます。

能 絃上(けんじょう)

kenjou

前シテ 老翁

後シテ 村上天皇

ツレ  藤原師長(ふじわらもろなが)

ツレ  老嫗

ワキ  師長の従者

琵琶の名手藤原師長は、渡唐の志を立てて都を出て、須磨の浦で風景をめでる汐汲の老人夫婦に出会い宿を乞います。塩屋に案内した老夫婦は高名な師長の琵琶を所望します。師長が一曲弾き始めると、俄かに時雨が降って軒の板屋を叩きます。老人は苫を取り出して屋根を葺くので、師長が不思議がると、こうして琵琶の音と雨の音を調和させるのだと説明します。師長は唯人ならぬ老夫婦に大いに感じ、且つ驚いて逆に演奏を頼むと、老翁は琵琶を、老姥は琴を弾じます。あまりの見事さに自分の未熟を悟り、渡唐をやめて密かに都に立ち帰ろうとしたところ、老夫婦はこれを引き留め、我らは村上天皇と梨壷の女御だと明かして消え失せます。やがて村上天皇が現われ、下界の龍神を呼び寄せて海底に沈んでいた獅子丸という琵琶を取り寄せて秘曲をつくされ、師長にこの名器を与えて舞を舞うのでした。

能 高野物狂(こうやものぐるい)

kouya monogurui

シテ 高師四郎

子方 松平春満

ワキ 高野山の僧

間  高師四郎の下人

常陸国の平松殿に仕える高師四郎(たかしのしろう)は、去年の秋に主君の遺言を守って、その子春満(しゅんみつ)を預かって育てています。主君の命日の日に、春満は一子が出家すれば七代前の祖先まで成仏できるので、仏道に入るという置手紙を残して出奔します。四郎は、主従は三世の契りという間柄なのに、なぜ自分を伴ってくれなかったかと恨みつつ、あてもない旅に出ます。ここは紀州の高野山です。出家した春満は得度剃髪して三鈷の松の辺りに、師の御坊に伴われてきます。一方四郎も遊芸者に身をやつして、高野山にたどり着き三鈷の松の下で休んでいます。高野山の僧は四郎の異形風体を見て、浄域にそぐわないと咎めます。四郎はその説教は心得ぬと言い、高野山では舞い狂ってはいけない禁制を破って、三鈷の松の故事や奥の院の様子などを思い浮かべて舞を舞います。この姿を見ていた春満は、かつての遺臣高師四郎であることに気づき、懐かしさの余り抱き合って喜びます。そして四郎も改めて元結を切って仏道に入ります。

能 小鍛冶(こかじ)

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前シテ  童子

後シテ  稲荷明神

ワキ   三条小鍛冶宗近

ワキヅレ 橘道成

間    末社の神

一条の帝は、三条小鍛冶宗近に御剣を打たせよとの不思議な夢のお告げを受け、臣下に宣旨を持たせて派遣します。宗近は宣旨に驚き、相槌を探すため氏神の稲荷明神に参ります。すると宗近の前に童子が現われ、御剣を打つことをすすめ、神通カにてカ添えすると言い捨て、稲荷山の彼方に消えます。宗近が鍛冶場で祈っていると、さっきの童子が氏神の稲荷明神の姿となって相槌を打つために出現します。そして共に御剣を打ち上げ、表に小鍛冶宗近、裏に小狐丸と銘を入れ、明神は再び稲荷の峯に帰ります。

能 小督(こごう)

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シテ 源仲国

ツレ 小督の局

ツレ 小督の侍女

ワキ 臣下

間  隠れ家の下人

源仲国(みなもとなかくに)は、嵯峨野に身を隠している小督の局を訪ねるよう命じられます。帝を思い琴で「想夫恋」(そうふれん)の曲を奏でている小督の局を仲国は探し出し、帝の御心を伝えます。そして名残の酒宴の後、小督の返事を持ち都に帰って行きます。

能 小袖曽我(こそでそが)

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シテ 十郎祐成

ツレ 五郎時致

ツレ 母

ツレ 鬼王

ツレ 団三郎

間  春日局

曽我十郎祐成(すけなり)と五郎時致(ときむね)の兄弟は、源頼朝が富士の裾野で巻狩りを行うので、この機会に日頃から親の敵と狙っている工藤祐経(すけつね)を討つ決心をします。そこで母に暇乞いをするため、また、五郎の勘当の許しも得たいと、兄弟は母のもとを訪れます。十郎の来訪を母は大変喜びますが、親の意向に背いた五郎が来たことを怒り、再度の勘当を言い渡します。十郎は母の前に五郎を連れて出て、懸命に許しを請いますが、一向に聞き入れられません。兄弟は悲しく立ち去ろうとすると、さすがに母も耐えかねて不孝も勘当も許します。兄弟は喜び、めでたい門出に祝杯をあげて舞を舞い、これが親子最後の対面かと名残を惜しみつつ、母に別れの挨拶をして、狩場へと出立します。

能 胡蝶(こちょう)

kochou

前シテ 里女

後シテ 胡蝶の精

ワキ  旅僧

和州三吉野の僧が、一条大宮というところに着きます。見れば由緒ありげな古い御所があり、その階段の傍らに今を盛りと梅の花が咲いています。憎が御所に近づくと、若い里女が現われ声をかけます。僧が御所の謂れを聞くと詳しく話し、実は自分は人間ではなく胡蝶の精で、必ず僧の夢中に現われ、自分の真の姿を見せようと約束して消えてしまいます。僧が熱心に法華経を唱えていると、胡蝶の精が美しい姿を現わし、経文の功徳により梅の花にも飛びかけることを得たと嬉しげに舞い続けます。胡蝶が夜明けの空に飛び去ったかと思うと同時に僧の一睡の夢も醒めたのでした。

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