2016 Copyright(c) Horyukai LTD. All Rights Reserved.
※写真の転写はご遠慮ください 

​能の演目 さ行

能 西行桜(さいぎょうざくら)

saigyouzakura

シテ   桜の精

ワキ   西行法師

ワキヅレ 花見男

間    西行庵の能力

ここは都西山、西行法師の庵室です。毎年花を眺める人で賑わうのを嫌って、今年は花見を禁制にします。それとは知らず都から沢山の人が訪れ、これも花の咎と西行は詠み、今宵一夜花の下で明かそうと人々にもすすめます。西行がまどろむ夢枕に白髪の老翁が現われ、自分は桜の樹から出てきた花の精であり花には咎がないと舞を舞います。しかし夜が明け染めるとともに、消え失せます。

能 鷺(さぎ)

sagi

シテ 鷺

子方 帝王

ワキ 蔵人

ワキヅレ 従者・立衆

時の皇帝が、大臣をはじめ蔵人などを召して神泉苑の汀で御遊をします。池の洲で遊んでいる鷺をご覧になった帝は、鷺を捕らえよと命じます。鷺はその都度羽音を立てて逃げてしまうので、蔵人は勅命であるというと、鷺は羽を垂れて静かに地に臥すので、蔵人は抱き上げて御前に持参します。帝はことのほかこの様子に感じ入り、鷺にも蔵人にも共に五位の位を授けます。そしてこの鷺を放せと宣命されました。放された鷺は嬉しげに空に舞い上がり、そのまま何処ともなく飛び去ります。

能 桜川(さくらがわ)

sakuragawa

シテ 桜子の母

ワキ 磯辺寺の住僧

前ワキヅレ 人商人

筑紫日向の国桜の馬場に住む桜子は、家の貧困を救いたい一心で人買いに身を売り、その代金と手紙を母の所に送ります。母はあまりの悲しさに心乱れ、我が子の行方を尋ねて流浪の旅に出てしまいます。身売りした桜子は、常陸の国磯辺寺の住職と契約を交わし平安な月日を送っています。花のさかりに僧は、桜子を伴って桜川へ花見に出かけます。一方狂女となった母も、この桜川のほとりにやってきます。狂女は我子の面影をしのびながら手に持った網で花びらを掬い、愛児桜子を失ったいきさつを語ります。僧は傍らの桜子に逢わせ、共に元の故郷に帰り、仏果の縁で二世安楽の身となるのでした。

能 三笑(さんしょう)

sanshou

シテ 恵遠禅師(えおんぜんじ)

ツレ 陶淵明(とうえんめい)

ツレ 陸修静(りくしゅうせい)

子方 童子

晋の恵遠(えおん)禅師は盧山の麓で、十八人の賢人らと共に白蓮社を結んで西方浄土を念じ、三十余年の間隠遁生活を送って虎渓を出ませんでした。あるとき陶淵明と陸修静の二人が禅師の庵室を訪ねると、心を許した友とて招き入れ、三人は盧山の瀑布(ばくふ)を眺めながら盃を交わしました。そうして、陶淵明が県の長官になって八十日余りで官を辞し、酒を愛し自然を友として詩境三昧にふけっていること、又陸修静は神仙の術を極めて陸道士と呼ばれましたが、浮世の俗塵を避けて隠居生活を送っていることなどを語らいながら、禅師は立って楽を奏し、酔いに乗じて辺りをそぞろ歩いていました。するといつしか二人は虎渓の橋を踏み越えていました。この橋こそ禅師がかねて渡るまじと誓っていたので、淵明が禁足を破り給うたかというと、禅師ははじめて虎渓を出ていることに気づき、三人は手を打ってどっと大笑いしました。

能 石橋(しゃっきょう)

shakkyou

前シテ 童子又は老樵

後シテ 獅子

ワキ  寂昭法師

ここは中国の清涼山(しょうりょうぜん)です。谷と谷との間にかかっている石の橋は石橋(しゃっきょう)といって現世と浄土をつなぐ謂れのある名所です。ここに日本から渡って来た僧・寂昭法師(じゃくしょうほうし)がたどり着き、暫く休んでから橋を渡ろうと思っています。すると何処からともなく柴を背負った樵童が通りかかり、橋の由来を教え、みだりに渡ってはならないと諭し、暫く奇特を待つように言い残して去ってしまいます。寂昭法師が橋の向うを見ていると一匹の獅子が現われ、雄壮な獅子舞をみせます。

●流儀によって前場の樵童はシテです。又老人(樵老)に変わることもあります。連獅子といって親子(白獅子、赤獅子)が連れ立ってやる演式もあります。

能 俊寛(しゅんかん)

shunkan

シテ 俊寛

ツレ 康頼

ツレ 成経

ワキ 赦免使

平家討伐の陰謀が顕れて、俊寛僧都、平判官康頼(たいらはんがんやすより)、丹波少将成経(なりつね)の三人は九州薩摩の鬼が島に流されます。その後中宮の安産祈願の大赦が行われ、康頼、成経の二人だけが許されることになります。この島に赦免使が到着し、三人は夢かとばかり喜びますが、俊寛の名がありません。俊寛は筆者の誤りかと疑いますが、自分だけが許されない事を知り、愕然とします。出船の時刻になり俊寛は必死に乗船を願いますが、船人はそれを振り切って船を出し、俊寛はその声を頼りに遠ざかる船をいつまでも見送ります。

能 猩々(しょうじょう)

shoujyou

シテ 猩々

ワキ 高風

ここは中国金山の麓、楊子の里。ここに住む高風という青年は大変親孝行者で、ある夜不思議な夢を見ます。楊子の市に出て酒を売れば富貴の身となるというのです。夢の告げのままに酒を売っていると、確かに富貴となってきました。ところが一つ不思議なことは、市毎に酒を飲む者がありますが、どんなに飲んでも顔色一つ変わりません。名を尋ねると海中に住む猩々と答えます。高風は川岸に酒壷を置き、猩々が現われるのを待ちます。やがて波間より猩々が現われ、孝行の徳をめで、汲めども尽きない酒を与え、霊酒を酌み交わすうちに酔い臥してしまいます。

●小書に猩々が七匹出る「七人猩々」とシテが特別な舞を舞う「乱」があります。

能 隅田川(すみだがわ)

sumidagawa

シテ   梅若丸の母

子方   梅若丸

ワキ   渡守

ワキヅレ 旅人

ここは隅田川のほとりにある渡し場です。今日は大念仏供養があるので、大勢の人が集まっています。そこに我が子を人買いにさらわれ心乱れ、行方を尋ねて東国に下ってきた狂女が現われ、渡し船に乗り込みます。船頭が対岸に着くまでの徒然に大念仏の因縁話を聞かせます。船中の人が貰い泣きする中で、狂女がひとしお泣き入るので仔細を聞くと、それこそ尋ねている我が子、梅若丸であると答えます。母が墓前で大念仏を唱えると、塚の中より幼子の声が唱和し、梅若丸の霊が現われます。しかしもとより幻、哀れ消え失せ、後は塚が残るばかりであった。

能 西王母(せいおうぼ)

seioubo

シテ   西王母

ワキ   帝王

ワキヅレ 大臣

ところは中国、周の時代、穆王(ぼくおう)の治めるたいそうめでたい聖代を迎えて、君臣相和し、皆花の都に群れ来て参内し共に泰平を祝って大賑わいです。そこへ、どこからとも知れず桃花の枝を肩にした若い女が現われます。そして、三千年に一度花咲き実を結ぶ仙桃が今花咲いたのも君の御威徳によるものであるから献上しよう、と言って宮殿へ赴きます。女を引見し、桃の謂れを聞いた帝王は、それは西王母の桃かと問います。女ははじめ答えませんが、やがて自分が西王母の化現であると明かし、後に真の姿で現われ仙桃の実をも捧げようと約束して天に上がります。帝王が管絃を奏して西王母が天降るのを待っていると、やがて侍女を従えた西王母が光輝く妙なる姿で現われ、仙桃の実を帝王に捧げ舞を舞います。喜びの酒宴に皆快く酔い、いつしか西王母は天上へと消え去ります。

能 殺生石(せっしょうせき)

sesshouseki

前シテ 里女

後シテ 野干の精

ワキ  玄翁道人

間   能力

玄翁という道人が那須野の原に着き、一休みしていると何処からともなく里女が現われ、傍らの石を指し、那須野の殺生石と呼ばれているので、近付くなと注意します。玄翁がその理由を聞くと、玉藻の前という化生の者の話をします。玄翁は話が余りに詳しいので身許を聞くと、自分こそ昔の玉藻の前であると明かし、夜には姿を見せるから恐れず待ち給えと言い残して、石の影に隠れます。やがて、夜が深まると狐の姿をした石魂が現われます。石塊は戒を受け成仏し、この後は悪事をしないと誓ってまた石の沈黙に戻ります。

能 蝉丸(せみまる)

semimaru

シテ   逆髪(さかがみ)

ツレ   蝉丸

ワキ   清貫

ワキヅレ 輿舁(こしかき)

間    博雅の三位

延喜帝の第四皇子蝉丸は生まれついて盲目なので、帝の命令で逢坂山に捨てられ、琵琶を弾いて寂しく暮らしています。博雅三位が訪れ藁屋を作り再訪を約束します。一方姉の逆髪は狂乱となり、逢坂山に迷い込み、はからずも姉弟は再会します。二人は自分たちの不運を嘆き互いに慰め合いますが、時が過ぎ名残を惜しみつつ、再び別れていきます。

能 千手(せんじゅ)

senjyu

シテ 千手

ツレ 平重衡(たいらのしげひら)

ワキ 狩野介宗茂(かのうすけむねもち)

平清盛の五男、重衡は一の谷の合戦で捕えられ、一時鎌倉の狩野介宗茂に預けられています。源頼朝はこの若武者に同情し、残り少ない命の彼を慰めるようにと自分の侍女の千手の前を遣わしました。ある春の雨の夜、宗茂は重衡を慰めるため酒を勧めにやって来ます。そこへ千手も訪れ重衡が先日頼朝に願い出た出家の望みがかなわぬことを告げます。これも南都の仏寺を焼いた罪業の報いかと嘆く重衡の心中を思いやり、千手は酒の酌をし、朗詠をうたいます。更にいつしか芽生えた重衡への恋慕の情をこめて舞を舞ううち、重衡も心を開いて琵琶を弾じます。千手も嬉しく琴を合わせ、夜更けまで束の間の小宴を楽しみますが、翌朝、重衡は勅命によって都へ帰されることになります。千手は二度と再び会えぬであろう、その後ろ姿を涙ながらに見送るのでした。

能 草紙洗(そうしあらい)

soushiarai

シテ 小野小町

子方 王

ツレ 紀貫之

ワキ 大伴黒主

立衆 朝臣

間  黒主の従者

清涼殿(せいりょうでん)の御歌合に大伴黒主と小野小町が互いに相手となることが決まりました。小町は和歌の名手なので、尋常の手段では勝てないと思った黒主は、小町の私宅に忍びより小町が詠んでいた歌を万葉集の草紙に書き込み、盗作として提出しようと明日の歌会を待っています。御歌合の当日、小町の歌が第一席になると、負けた黒主は異議を申し立て、かねて用意の万葉草紙を証拠に古歌の盗作であると陳じます。黒主の陰謀を知らぬ小町は、その草紙を洗って身の潔白を明かします。

能 卒塔婆小町(そとばこまち)

sotobakomachi

シテ   小野小町

ワキ   旅僧

ワキヅレ 従僧

高野山の僧が鳥羽のあたりまで来ると、乞食女が卒塔婆に腰かけています。僧が咎めると仏法の奥義を語り、小野小町のなれの果てであると明かします。そのうち深草少将の霊が取りつき、狂乱状態となり百夜通いの有様などを見せるが、やがて我に返り悟りの道に入る事を願って、あてもなくさまよい去るのでした。

Please reload