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​能の演目 た行

能 大会(だいえ)

daie

シテ 天狗

ツレ 帝釈天

ワキ 比叡山の僧

比叡山の僧の庵室へ山伏姿の天狗が現われ、鳶に化けていた時子供に捕らえられたのを助けてくれた報恩に、何でも望みを叶えようと言います。僧が、釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で行った説法の光景を目のあたりに拝みたいと希望すると、天狗は快く承諾しますが、これは戯れに幻影を見せるまでの事だから、見ても本気になって信心を起こすなと注意し、目をふさいで待ち給えと言って消え失せます。虚空に音楽が響き、仏の御声が聞こえるので僧が目を開けてみると、釈迦の法華経説法の光景が出現しました。僧は思わず天狗の言葉を忘れて随喜の涙を眼に浮かべ、一心に合掌礼拝してしまったので、帝釈天が、天狗の魔法によって信心の堅い僧を惑わしていると憤慨して天降ります。天狗は恐れをなし、魔術は破れ大会の光景は消えて、天狗は深い岩洞へと逃げ込んでしまいます。

能 高砂(たかさご)

takasago

前シテ 尉

後シテ 住吉明神

ツレ  姥

ワキ  神主友成

間   浦の男

九州肥後国阿蘇宮の神主友成は、都に上る途中播州(兵庫県)高砂の浦に見物に立ちよります。たそがれ近い浜辺に、尾上寺の鐘の音が響き、そんな景色のなか老夫婦が現われます。友成が高砂の松の由来を尋ねると、老翁は高砂住江の松を「相生」と呼ぶ由来を語り、二人は相生の松の精であると明かして、沖の彼方に消えてしまいます。友成は、高砂の浦を出帆し住江の岸に到着します。天中高く月が澄み渡る夜更け、波間から住吉明神が出現し、国土安穏、寿福千年を祝い、舞を舞います。

能 竹雪(たけのゆき)

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シテ 実母

ツレ 姉娘

子方 月若

ワキ 直井左衛門

越後国の住人直井左衛門は、妻と離別して近くの長松に住まわせ、二人の子の姉を母の方に、弟の月若を自分の方に置きました。新たに妻を迎えた直井は宿願のため参篭する間、月若のことを後妻に頼んで出かけました。その留守中、継母に虐げられた月若は家を出ようと思い、暇乞いに実母を訪ねます。そこへ継母から迎えがきて仕方なく月若は家に帰ります。継母は実母へ告げ口に行ったのであろうと腹を立て、月若の小袖を剥ぎ取り、薄着の月若に降り積もった竹の雪を払わせます。月若は厳しい寒さの中、家に入ることもかなわず、遂に凍死してしまいます。その知らせを受けた実母と姉が、涙ながらに雪の中から月若を捜し出し、悲しみにくれていると、直井が帰宅して事の次第を知り、後妻の無情を共に嘆きます。すると「竹故消ゆるみどり子を、又二度返すなり」と竹林の七賢人の声がして、不思議にも月若は生き返ります。親子は喜びあい、この家を改めて仏法流布の寺にしました。

能 龍田(たつた)

tatuta

前シテ 巫女

後シテ 龍田姫の霊

ワキ  旅僧

ワキ  従僧

間   里人

六十余州に経を広め歩く僧が、龍田明神に参詣のため河内の国に急ぐ途中、龍田川に到着します。すると一人の巫女が現われ、古歌をひき僧を別の道から社前に案内します。そして霜枯れの季節にまだ紅葉しているのを不審に思った僧に、紅葉が神木であり、自分は龍田姫の神霊であると名乗って社殿の中に姿を消します。その夜、僧が社前で祈っていると龍田姫の神霊が現われ、明神の縁起を語り、神楽を奏して虚空へ上って行きます。

能 田村(たむら)

tamura

前シテ 童子

後シテ 坂上田村丸

ワキ  旅僧

間   清水寺門前の者

 

東国の僧が、都見物に出かけ清水寺に着きます。爛漫と咲く桜に見とれていると玉箒を持って桜の木陰を清めている童子がいます。僧が童子にこの寺の来歴を訪ねると、清水寺建立の縁起を委しく教え、また辺りの名所も教えます。僧が不思議に思い名を尋ねると、知りたくば帰る方を見てくださいと言い残して、田村堂の内陣に消えます。(中入)僧が桜の木陰で法華経を読んでいると、坂上田村丸の亡霊が甲冑姿で現われます。勅命を受けて鈴鹿山の賊を討ち取った軍物語をします。そして合戦の最中に千手観音が出現し、敵をことごとく滅ぼした事を話し、これも観音の仏力であると述べます。

能 竹生島(ちくぶしま)

chikubushima

前シテ 漁翁

後シテ 龍神

前ツレ 浦の女

後ツレ 弁才天

ワキ  臣下

間   竹生島明神の社人

帝に仕える臣下が竹生島詣でを志し、琵琶湖の湖上に竹生島が見えるところにたどり着きます。おりしも老漁夫と女性を乗せた小船が行くので便船を頼みます。やがて舟は竹生島に着き、老人は臣下を社殿に案内します。女人禁制の島に女性も同行するのを不審に思った臣下に、女性は弁財天の徳を讃え、自分は人間でないことを明かし、件の女性は社殿に、老人は湖中に姿を消してしまいます。暫くすると社殿は鳴動し、弁財天が姿を現わし天女の舞を舞います。月が湖上に澄渡ると、龍神が出現し、金銀珠玉を臣下に捧げ、衆生再度、国土鎮護の誓いをあらわし、弁財天は御殿に、龍神は湖底の竜宮に姿を消します。

能 張良(ちょうりょう)

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前シテ 老人

後シテ 黄石公(おうせきこう)

ツレ  龍神

ワキ  張良

漢の臣下の張良は、夢の中で老人が沓を落としたので、履かせると、五日目に兵法の奥義を伝授すると言われ、目覚めます。五日目に行くと遅参を咎め、さらに五日後に来るように言い、消え失せます。張良は今度は早暁に出向くと、馬に乗った黄石公が現れ、沓を川へ落とします。張良は拾おうとしますが、激流に阻まれ、中々拾う事ができません。とそこに龍神が現われ、沓を拾い張良に渡します。張良は黄石公に沓をはかせ、無事兵法の奥義を伝授されます。

能 土蜘(つちぐも)

tuchigumo

前シテ 僧

後シテ 土蜘の精

ツレ  源頼光

ツレ  小蝶

ツレ  従者

ワキ  一人武者

間   一人武者の下人

武勇の誉れ高い源頼光(らいこう)は、原因不明の熱病に冒され、病臥しています。侍女の小蝶が薬餌療法に手を尽くせばきっと治ると慰めますが、頼光は今は死期を待つばかりだと嘆きます。その夜更け、頼光がまどろんでいると、怪しい僧形の者が現われ多くの蜘蛛の糸を頼光に投げかけて、散々に苦しめます。頼光は屈せず傍らの名刀膝丸を抜き、二太刀、三太刀浴びせて、化生の者を追い払います。物音を聞きつけ一人武者達は、血の後をたどり土蜘の古塚を突き止めます。土蜘は千筋の糸を武者達に繰りかけますが、最後には首を討たれて退治されます。

●シテが投げかける蜘蛛の巣は、数メートルの長さの雁皮という薄い和紙を鉛の棒を芯にして巻き断ち庖丁で小口から2ミリ幅ぐらいに切って封をしたものです。

能 経政(つねまさ)

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シテ 平経政

ワキ 僧都行慶

京都の仁和寺、御室御所の守覚法親王は、琵琶の名手である平経政を少年の頃から寵愛されていました。ところが、このたびの一ノ谷での源平の合戦で経政が討たれてしまったので、生前彼にお預けになった青山(せいざん)という銘のある琵琶の名器を仏前に供え、管弦講(音楽法要)を催して回向するように、行慶(ぎょうけい)僧都に仰せつけになります。行慶は管弦を奏する人々を集めて法事を行います。するとその夜更け、経政の亡霊が幻のように現われ、御弔いの有難さにここまで参ったのであると、僧都に声をかけます。そして手向けられた琵琶を懐かしんで弾き、夜遊の舞を舞って興じます。しかしそれもつかの間、やがて修羅道での苦しみにおそわれ、憤怒の思いに戦う自分の姿を恥じ、灯火を吹き消して闇の中へと消え失せます。

能 鶴亀(つるかめ)

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シテ 皇帝

子方 鶴

子方 亀

ワキ 大臣

間  官人

時は八世紀のはじめ、玄宗皇帝の御世です。今日は四季の節会の事始めとあって、皇帝は月宮殿に行幸になるので、みな宮中に参内せよとの御布が出されます。宮中では最初に天子が不老門にお出ましになり、国民の礼拝を受けます。大臣が鶴亀に舞を舞わせたあと、舞楽を遊ばすよう奏します。鶴亀は勅命によって舞を舞い、皇帝は自ら立って舞楽の秘曲を奏します。

能 定家(ていか)

teika

前シテ  都の女

後シテ  式子内親王の霊

ワキ   旅僧

ワキツレ 従僧

間    都千本辺の者

北国から上って来た旅の僧が、都千本辺りで暮色を眺めているうち、俄かに時雨が降ってきたので雨宿りをしていると、そこに一人の若い女が現われ、ここは歌人藤原定家が建てた時雨の亭(ちん)だと教えます。女は昔を懐かしむかに見え、定家の歌を詠み、僧を式子内親王の墓に案内します。もと賀茂の斎院だった内親王は、定家と人目を忍ぶ深い契りを結ばれましたが、世間に漏れたため、逢うことが出来ないまま亡くなりました。それ以来定家の執心が、葛となって内親王の墓にまといつき、内親王の魂もまた安まることがなかったと女は物語り、自分こそが式子内親王である、どうかこの苦から救いたまえと言って失せます。その夜、僧が読経して弔うと、内親王の霊が墓の中から現われ、法の力によって成仏したことを喜び、報恩のためと舞を舞います。やがてもとの墓の中に帰り、再び定家葛にまといつかれて姿を消します。

能 天鼓(てんこ)

tenko

前シテ 王伯

後シテ 天鼓

ワキ  勅使

間   官人

天から降ってきた鼓を大切にしていた少年天鼓は、帝の命令に背いて鼓を献上しなかったため、呂水に沈められてしまいます。それ以来誰が打っても鼓はならないので、天鼓の父王伯が呼び出され、王伯が打つと妙なる音を出します。帝は心を打たれ、王伯に宝を与え、呂水のほとりで天鼓の霊を弔っていると、天鼓の霊が現われて歓喜の舞を舞い、又呂水に消え失せます。

能 道成寺(どうじょうじ)

doujyouji

前シテ  白拍子

後シテ  蛇体

ワキ   道成寺の住僧

ワキヅレ 従僧

間    能力

 

紀伊国道成寺では故あって久しく撞鐘がありませんでしたが、この度撞鐘が再興されることになり、本堂で厳粛な鐘の供養が営まれている最中、一人の白拍子が現われます。能力は女人禁制だからと咎めると、供養のため舞を舞って供えたいと頼むので、能力は許します。白拍子が拍子を踏み始めると僧たちは眠りを催し、その隙に白拍子は鐘に近づき、この鐘怨めしやと竜頭に手をかけて鐘を引き下し、その中に飛び入ります。昔この所に一人の娘がいて、さる山伏に恋い焦がれ、山伏が逃げるのを追いかけ、山伏はこの寺の鐘の中に隠れました。娘は執心のあまり大蛇となって追いすがり、鐘に巻きつくと遂に鐘は溶けて、山伏もろとも消えてしまいます。先の白拍子はその娘の怨霊であろうと住僧たちが鐘に向かって祈ると、鐘は再び上がり鬼女が現われ、僧に挑みかかりますが、祈祷の力に負けて逃げ去って行きます。

●本曲の鐘は作り物ながら、実物大で八十キロほどあります。鐘を吊す綱のための能舞台天井にある滑車も、笛柱に取り付けてある金属の環も、この能のためだけにあります。

能 東北(とうぼく)

touboku

前シテ 里女

後シテ 和泉式部

ワキ  旅僧

間   東北院門前の者

東国より都に上って来た旅僧が、東北院を訪れ一本の梅の木に見入ります。そこに里女が現われ、その梅の木の由緒を語り、僧に読経を頼み自分が梅の木の主であると告げ、消え失せます。僧が読経をしていると、和泉式部の霊が現われ、昔関白藤原道長の歌によって死後歌舞の菩薩になったと語ります。更に、和歌の徳や東北院の霊地であるとことを讃え、舞を舞って暇を告げます。霊が方丈に入ると僧の夢は覚めます。

能 融(とおる)

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前シテ 老翁

後シテ 河原左大臣

ワキ  旅僧

間   都六条辺の者

東国から都へ上がってきた僧が六条河原院の廃墟に着いて休んでいると、腰蓑をつけ田子を担った汐汲みらしい老人がやってきます。海辺でもないこの土地で汐汲とはおかしいと思い老人に尋ねると、ここは昔、源融公が広大な邸宅を作り、邸内に陸奥の塩釜を移したところと教えます。老人は僧の請いに任せて一代の風流事を物語り、また付近の山々の名を教え、汐汲むところを見せると思うと、姿は消えてしまいます。(中入)僧が苔を枕に奇特を待ちわびていると、融大臣の亡霊が優雅な姿で現われ、古の曲水の宴などのことを語り、雅な舞を舞いますが、西に傾く月に惹かれるように姿を消します。

能 巴(ともえ)

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前シテ 里女

後シテ 巴

ワキ  旅僧

間   粟津の里人

粟津が原にさしかかった木曽の僧は、神前で涙を流している里女に出会います。不審に思って問い掛けると、里女はこの祭神は木曽義仲であると教え、同郷のよしみで拝むことを勧めます。いつか日が暮れ、里女は自分は亡者であると明かして草葉の陰に消えます。僧が亡者の跡を弔っていると甲冑姿の巴御前の亡霊が現われ、粟津が原の合戦の様を物語ります。かの地で自害を決意した義仲は巴御前に、汝は女だから忍んで生きよと守小袖を託します。巴御前は姿を変えて一人木曽に落ち延びた事を語り、僧に回向を頼み、そのまま見えなくなります。

能 朝長(ともなが)

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前シテ  青墓の長者

後シテ  朝長の霊

ツレ   侍女

トモ   供人

ワキ   旅僧

ワキヅレ 従僧

間    青墓の宿の者

平治の乱に破れて都落ちした平朝長は、合戦の時に膝にうけた矢傷が悪化して、一党と行動を共にすることが不可能である事を覚悟、美濃の国青墓の宿で自刃してしまいます。その朝長が幼いころに守役をしていた嵯峨清涼寺の僧が朝長の死を風の便りに聞いて、せめて菩提を弔おうと青墓に下ります。やがて朝長の墓所を尋ねあて、懇ろに回向していると、そこへ男女二人の供をつれた美しい女性が詣で来て、朝長の因縁を語りあいます。女は朝長が都落ちしてここを通りかかった時、一夜の宿りをした青墓の宿の長者、僧は朝長の守役とわかってみると、互いにその縁を懐かしみあって、あらためて朝長の跡を弔うのでした。僧の所望によって、長者は義朝・朝長親子の様子を物語り且つ朝長自刃の有様を語り、僧を伴って我が家に案内し、朝長の菩提を弔ってくれるようにたのみます。僧が懇ろに回向していると、その功力に引かれるように朝長の幽霊が幻のように現われます。朝長は保元平治の戦乱のむごたらしさを語り、大敗した無念さを口惜しがり、膝頭を射られて落伍のやむなきにいたったのを不甲斐なく思って、腹を掻き切って修羅道に落ちた事などを語った後、長者への思慕をほのめかして消え失せます。

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